電子顕微鏡で表面計測
電子顕微鏡の中でも走査型電子顕微鏡に分割型反射電子検出器を取り付けることにより、ナノレベルの試料表面形状測定ができます。
- 走査型電子顕微鏡
電子ビームで試料表面をなぞり(走査)、その情報を電気的に拡大することにより、観察する装置です。 - 電子線の挙動
試料に照射された電子線は、我々が普段目にする光とは違い、反射するものほか、突き抜けるもの、新しく電子を放出するものなどがあります。 - 組成像、凹凸像、輪郭像
分割した反射電子センサーで試料から反射する電子を観測することで、試料の組成、凹凸、輪郭がわかります。
走査型電子顕微鏡(SEM)
走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope は電子ビームで試料表面を走査し、その情報を電気的に何千倍にも拡大して観察する装置です。
- 走査
走査とは、順に位置をずらしながら、試料表面全体をなぞることです。
紙の下に硬貨をおいて、鉛筆でその上をこすると、硬貨の絵が紙に写しだされるの同じです。SEMで鉛筆にあたるのが電子ビームです。 - 二次電子
硬貨の場合、鉛筆が走査したところは実寸で色の強弱として紙に記録されます。数ミクロンの領域でこれはできません。そこで、鉛筆の役割を走査・検出と記録に分けます。
走査の最初の場所に鉛筆を移動して、そこの紙の色を測定(検出)します。記録側では、その鉛筆の位置にあわせて、その紙の色を記録します。鉛筆を少し移動させるごとに、この作業を繰り返せば、鉛筆をミクロンの大きさにしても記録することができます。
SEMでは紙の色の代わりに、電子線が試料に当たったときに放出される二次電子の量を高感度のセンサーでとらえています。 - 拡大
硬貨の場合、走査される領域は2cmほどですが、記録するときに1辺を40cmにすれば、20倍ほどになります。
SEMでは、拡大は電気的に行われます。電子線を使用して、非常に小さい領域を走査するるので、TV画面に映すと何千倍にも拡大することになります。走査する領域は、精密な電子機器が制御して、わずか数ミクロン(千分の1メートル、髪の毛の1/100)やそれ以下です。
電子線の挙動
走査型電子顕微鏡によって、試料に照射された電子線は、反射するものほか、突き抜けるもののや、新しく電子を放出させるものもあります。
- 二次電子
通常の画像を観察する際に使用される電子です。試料表面から発生し、表面の凸部分で多く発生します。二次電子の検出からえられるSEM像では凸部分が明るく、ちょうどライトを当てて撮影した影のある画像ができます。 - 反射電子
試料で反射された電子です。表面付近の材質により、その量がかわるため、組成の違いを知ることができます。もっと詳しい組成解析をする場合は、発生する特性エックス線を使い元素特定を行います。
反射電子は表面の形状によって、反射する方向が違いますので、その方向を知ることで、表面の凹凸を知ることができます。
組成像、凹凸像
分割した反射電子センサーをSEMに取り付けることで、試料の組成、凹凸がわかります。
走査方向と直角に分割された反射電子センサーは試料の真上に配置されます。入射電子ビームは検出器の真ん中を通り試料上を走査します。センサーは太陽電池の原理で、電子が当たると電流を発生します。
反射電子は表面の形状により、反射の方向が変わり、両方のセンサーに同量検出されるのは、表面が平らなときだけです。
組成像
センサーA、Bの信号を加算すると、表面の形状の影響が相殺されます。表面で反射される反射電子の総量を検出することになります。反射電子量は組成で変化しますので、組成の違いを検出することができます。
凹凸像
センサーAからBの信号を減算する(Bの信号を反転して加える)と、表面形状による特徴が強調されます。センサーAの信号とにていますが、一つでは、信号量の変化が組成の違いによるのか判断できないので、2つのセンサーが必要です。